さて、お手元に参考図書は準備できましたか!
それでは、本日から具体的な木造構造設計を学んでいきましょう。
まず、木造の構造計算ルートはルート1 ルート2 ルート3 (ここでは高さ60m超は省略します。)に分かれます。
各ルートについてですが、高さ16mまではルート1。16mを超えるとルート2 ルート3になります。
木造の構造設計では、水平力を「告示に載っている耐力壁」で負担させるか、それ以外(例えば木質ラーメン構造)で負担させるかで、計算方針が異なります。
まず一般的な方法である「告示に載っている耐力壁」を使う場合を説明します。
正確に言えば、施行令46条及び告示1100号に載っている、筋交いや構造用合板、構造用パネルなどで、風荷重・地震力を負担する計画とするものです。
木造の構造設計でまず分かりにくいところが、耐力壁を使った場合は基準せん断耐力が定められていて、いわゆる「壁倍率」というものがあるからです。
木造では2025年4月の基準法改正まで「四号建築物」と呼ばれる構造規定の確認審査を省略できる制度がありました。「四号建築物」とは、2階建て以下 延べ床面積500㎡以下の建物です。住宅などの小規模な建物です。四号建築物は壁の量(長さの合計)が必要とされる壁の量より多ければよいという簡便な計算方法です。ご存知の方も多いと思いますので詳しくは説明しませんが、壁量計算と呼ばれる簡便な計算方法で風荷重、地震力に対して基準をクリアすればいいのですが、その時に使うのが「壁倍率」です。例えば910mm間隔の柱間に45x90mmの筋交いを1本入れると壁倍率「2」となります。壁量計算ではこれを、
「壁量=0.91m x 2倍=1.82m」とします。
X方向Y方向別々にこの耐力壁の長さを足していって、総長さを計算して、それが必要とされる長さ以上あればOKとなります。
また、阪神淡路大震災の際に、長さは足りているけれども耐力壁が平面上偏りがある、例えば南側に開口部が多いので耐力壁が少なく、北側は水廻りがあって壁が多いので耐力壁も多い建物だと南側の水平耐力が不足し地震動によって建物に「ねじれ」が生じ倒壊した例が散見されました。(構造計算でいう偏心率が悪い建物。)そこで、2000年の法改正では耐力壁の配置に関する検討が追加されました。(四分割法と呼ばれたりします。)
普通の構造設計では、風荷重や地震力は「kN」の単位を使いますので、木造は「壁の長さ」なの?となります。
実は「耐力壁」には基準せん断力があって、1倍=「1.96kN/m」となっています。
先ほどの例でいうと、45x90mmの片筋交いは「壁倍率2倍」ですから
せん断耐力=1.96kN/m x 2倍 x 0.91m=3.57kN となります。
こうすると、風荷重や地震力の「kN」と比較することが容易に分かります。
「1.96kN/m」という半端な数値は、SI単位への変更などがあり「200kg/m」だったものが変化したもので、「壁倍率」は実大実験で1.96の「何倍あるか」を算出したものです。
このように、木造独特の「壁倍率」というものが使われているのが、他構造を設計されている方からすれば分かりにくい原因なのかもしれません。
ちなみに、2025年4月で改正された建築基準法では、四号建築物はなくなり、新三号と新二号になりました。
新三号は、平屋建てかつ床面積200㎡以下。新二号は2階建て以上です。
新二号・新三号は、「壁量計算」なのですが、今までの面積に係数をかける方法がなくなり、「㈶日本住宅・木材技術センター」のホームページに掲載されているExcelツールで必要な壁量を算出することになりました。
また、延べ床面積が300㎡を超えると(平屋でも)構造計算書を確認申請に添付することになりました。(改正前は500㎡を超える建物)
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