木造の構造設計2日目

一日目は、主に「告示耐力壁」を使用する構造計算ルートについて説明しました。この「告示耐力壁」は施行令46条1項に書かれている方法です。

では「告示耐力壁」を使用しない場合はどのようになるのでしょうか。

木造では少数派ですが、木質ラーメン構造または「告示耐力壁」以外の高耐力の耐力壁などで水平力を負担させる建物の場合、施行令46条2項によります。よく2項ルートと呼ばれています。

木質ラーメン構造は、大きな断面の木材を鉄筋コンクリートラーメン構造のように柱+梁でフレームを構成し、柱梁接合部を金物やGIR(グリュード・イン・ロッド)を用いて接合部がモーメント負担できるようにしたものです。木質ラーメン構造の特徴として、RC造やS造の柱梁接合部を剛接合として計算するのに対して、木造は完全な剛接合とはならず半剛接合となることです。木材はヤング係数が比較的小さくめり込みを生じるため、剛性が低くなる要素があるからです。また、構造検討では材料強度より接合部の耐力・変形で決定されることが多いです。建築コストが大きくなりがちなので、計画する際は注意してください。

次に、中大規模木造建築になると荷重が大きく、地震力も比例して大きくなるため、「告示耐力壁」では耐力が足りず、高耐力の壁を使用することもあります。通常の構造用合板9mmの壁倍率が「2.5」に対して、構造用合板24mm・釘ピッチ50mmなどにすると壁倍率「15」のような高い耐力を有する耐力壁ができるようになりました。これまで、耐力壁構造の基準書であった「木造軸組工法住宅の許容応力度設計(2017年版)」に加え、「木造軸組工法中大規模建築物の許容応力度設計(2024年版)」が㈶日本住宅・木材技術センターから出版されています。その中で高耐力仕様を用いる場合の追加検討項目が掲載されていますので、参考にしてみてください。

構造種別は他にも様々ありますが、方杖などのようなトラス架構を用いるものもあります。

木造の構造設計は、基本的にはルート1の規模内に収まることが多いですが、4階建てなどになるとルート2になり、層間変形角・剛性率・偏心率(0.15以下)、筋交いを用いた場合は、筋交いの水平力の負担割合によって地震力の割り増しがあるなど、検討項目が増えてきます。ルート3(保有水平耐力計算)ですが、木造建築はDsなど保有耐力計算に必要な数値が整備途中のためまだ一般的になっていません。

また。46条2項ルートになると、いわゆる「無等級材」が使用できず、構造用集成材などJAS規格に適合するもの、または「JAS製材」を使用する必要があります。最近公共工事にも木造建築が増えてきていますが、発注条件に地元産材を使用するように求められることがあります。46条1項に該当する建物では基本的に無等級材でもいいのですが、2項ルートになると地元産材を使用するにも「JAS製材」が必要なため、苦労することがあります。製材工場にJAS認定工場があれば、対応することが比較的容易ですが、近くにJAS認定工場がないときは工期などに注意する必要があります。


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